米中の狭間で日本はいかに処すべきか

 汗ばむ初夏、皆さまには恙なくお過ごしのことと拝察します。

 『中国ウォッチ』をお願いしているエコノミストの結城隆さん(多摩大学客員教授)が、タイムリーな論考を寄せてくださいました。

 「米中の狭間で日本はいかに処すべきか」 詳細はこちら

 米中の高官どうしの交流は、太平洋を越えて(つまり、日本を飛び越えて)活発におこなわれています。両国は激しく覇権を競っていますが、リスク管理を含めた多層的な意思疎通を怠りません。この二大国が貿易・投資と金融で相互に固く結ばれて、世界経済の車軸を回していることを考えれば、むしろ当然のこととも言えるでしょう。

 けれども、それに引き換え、ここへきての日中の政治的な距離感の広がりには危うさすら覚えます。いまでは名立たる企業までも、対中ビジネスをどうするか、ワシントンの顔色を窺いながら、立ちすくんでいる感が否めません。

 ゼロコロナ政策解除後、中国政府はヨーロッパの13ヵ国とアジアの2カ国に対して最長15日間のビザなし入国を再開する一方で、日本は蚊帳の外に置かれたままです。もはや日本が相手にされなくなっているせいだとしたら、これを放置しておいてはなりません。

 他方、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、日本では「今日のウクライナは明日の台湾」、「西のウクライナは東の台湾」などと声高に主張する人たちがおおぜいいて、主要メディアの論調も中国の海洋進出に対する警戒と、近い将来の台湾有事(?)を想定した防衛力の強化と安全保障をめぐる議論に流されているように思われます。

 しかしながら、ウクライナ情勢から日本が学ぶべきことがあるとすれば、それは次の2点であるべきです。

 僭越ながら、ロシアとウクライナの関係を30年間、見てきた上での感想です。

 米国には、もっとしっかりしてもらわないと困りますが、日本は、米国が企図する覇権対立の罠に嵌ってはなりません(バイデンでもトランプでも同じです)。背景にあるのは米国社会そのものの保守化です。「分断」という崖の淵に、日本の未来を見出すことはできません(ドイツを見てください)。
 中国の懐にまっすぐ飛び込んでいくような、肚の据わった<国士>はいないものか、と思います。

 本オフィシャルサイトは、これまでお世話になった、あるいは一期一会のご縁にあずかったすべての皆様に宛てて、日頃のご無沙汰をお詫びしつつ、月のはじめにご挨拶に代えて更新しています。
 講談社『現代ビジネス』へ寄稿しました(5月はじめ掲載予定)。
 「ロシア経済、崩れない理由」
 危機管理とは実務なり。ご笑覧頂ければ幸いです。

 5月中旬に中央アジアのカザフスタンを訪れる予定です。
 時節柄、どうぞご自愛くださいますように。

心を込めて

 2024年5月2日

西谷公明


石神井川沿いの小径につつじが咲く

「鉄とコンクリート」で固めた安全保障

前略 皆様には、穏やかな春の日をお過ごしのことと拝察します。

 「私たちは、自分たちが選んだ歴史的な道をともに歩んでいる」
 3月21日、プーチン大統領は、大統領選挙後の国民に宛てた声明でこう述べました。

 国民は、「プーチンの戦争」に反対せず、プーチンに投票さえしておけば、その限りにおいて自由で、安定した日常が続くだろうと信じています。
 オープンでリベラルな考えを持つ人々も含めて、大多数の国民は、自分たちが生きるロシアという国の現実を世界中の誰よりもよく知っています。彼らにとり、他に選択肢はありません。かくして「プーチンの戦争」は「ロシアの戦争」になりました。

 他方、3月22日にモスクワ郊外のクロッカス・シティで起きたイスラム国による銃乱射テロは、プーチン大統領の威信を貶め、モスクワ市民の平安を不安に変えました。

 それでも彼には、外敵の脅威を利用して統制をいっそう強め、外に向けて、この戦争を継続し、「歴史的な道」をいくための力に変える以外の選択肢はないようです。野性を隠さないその先に、明るい未来などあろうはずがないにもかかわらず。
 そして独裁者は、国民の知らないどこかで、ひとりロウソクに火を灯し、犠牲者の冥福を祈ります。

 先日、花見で来日したロシアの有識者(保守系)と会見しました。

 Q:ウクライナとの戦争に、朝鮮半島モデル(休戦/軍事境界線/事実上の国境)は可能か?

 A:現実的とは言えない。朝鮮での休戦協定は、国連と中国が署名して成立した。その役割をどこが担うのか。ロシアが求めているのは「鉄とコンクリート」の安全だ。それが保障されないから、自分でそれを築くしかないのだ。


 もはやロシアには、自国の安全のことしか頭にない、この戦争は終わらない、と感じ入った次第です。

 けれども、私にとって気がかりは、かつてロシアでいっしょに仕事をした元部下たちの消息です。
 いまは巨大軍需カンパニーの幹部を務める者もいれば、国家プロジェクトのリーダーとして活躍する者もいます。高い給料に誘われて、軍需工場へ転職した者も少なくありません。
 彼らのひとりひとりが内に秘める不安と、逃げることのできない生々しい現実を思うと、健康で平穏でいることだけを願わざるを得ません。

 本オフィシャルサイトは、これまでお世話になった、あるいは一期一会のご縁にあずかったすべての皆様に宛てて、平素のご無沙汰をお詫びしつつ、ご挨拶に代えて毎月1日に更新しています。

 講談社『現代ビジネス』への寄稿を再開しました。
 「ウクライナ、国家存亡を賭けた戦いの果てに」
 果たして一年後、この国はどうなっているか。
 ご笑覧頂ければ幸いです。概要はこちら

 時節柄、どうぞご自愛くださいますように。

草々

 2024年4月1日

西谷公明


桜の開花を待つ千鳥ヶ淵(3月27日撮影)

プロフィール

西谷 公明(にしたに ともあき)

1953年生まれ

エコノミスト
(合社)N&Rアソシエイツ 代表

<略歴>

1980年 早稲田大学政治経済学部卒業

1984年 同大学院経済学研究科博士前期課程修了(国際経済論専攻)

1987年 (株)長銀総合研究所入社

1996年 在ウクライナ日本大使館専門調査員

1999年 帰任、退社。トヨタ自動車(株)入社

2004年 ロシアトヨタ社長、兼モスクワ駐在員室長

2009年 帰任後、BRロシア室長、海外渉外部主査などを経て

2013年 (株)国際経済研究所取締役・理事、シニア・フェロー

2018年 (合社)N&Rアソシエイツ設立、代表就任

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  • コラボ

    中国ウォッチ(20)

    米中の狭間で日本はいかに処すべきか

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  • 講 演

    わが体験的ロシア・ウクライナ論

    (一社)内外情勢調査会 群馬/桐生支部懇談会

    2024年4月18-19日 群馬ロイヤルホテル/ミツバ企業年金基金会館

    概要はこちら

  • コラボ

    中国ウォッチ(19)

    中国が進めるグローバルサプライチェーンの再編

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  • 寄 稿

    「ウクライナ、国家存亡を賭けた戦いの果てに」

    現代ビジネス 2024年3月27日

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  • 講 演

    ウクライナから見たロシア/ロシアから見たウクライナ論

    2024年2月7日, 14日, 21日(全3回)早稲田大学エクステンションセンター

    概要はこちら

著 書

  • 復 刊

    ウクライナ 通貨誕生-
    独立の命運を賭けた闘い

    岩波現代文庫、2023年1月

  • 著 書

    ロシアトヨタ戦記

    中央公論新社、2021年12月

    詳細を見る

    目次

    プロローグ
    第一章 ロシア進出
    第二章 未成熟社会
    第三章 一燈を提げて行く
    間奏曲 シベリア鉄道紀行譚
    第四章 リーマンショック、その後
    エピローグ
    あとがき

  • 著 書

    ユーラシア・ダイナミズム-
    大陸の胎動を読み解く地政学

    ミネルヴァ書房、2019年10月

    詳細を見る

    目次

    関係地図
    はしがき-動態的ユーラシア試論
    序 説 モンゴル草原から見たユーラシア
    第一章 変貌するユーラシア
    第二章 シルクロード経済ベルトと中央アジア
    第三章 上海協力機構と西域
    第四章 ロシア、ユーラシア国家の命運
    第五章 胎動する大陸と海の日本
    主要参考文献
    あとがき
    索 引

  • 著 書

    通貨誕生-
    ウクライナ独立を賭けた闘い

    都市出版、1994年3月

    詳細を見る

    目次

    はじめに
    序 章 ウクライナとの出会い
    第一章 ゼロからの国づくり
    第二章 金融のない世界
    第三章 インフレ下の風景
    第四章 地方周遊~東へ西へ
    第五章 ウクライナの悩み
    第六章 通貨確立への道
    第七章 石油は穀物より強し
    終 章 ドンバスの変心とガリツィアの不安
    後 記
    ウクライナ関係年表

研究調査

ロシア、ウクライナ研究をオリジナル・グラウンドとし、 ユーラシア全体をキャンバスとする広域的なテーマを中心にして実践的な研究調査をおこなっています。

講 演

ロシア情勢、ウクライナ情勢を中心に、現地での経験談や苦労談などを織り交ぜながら、わかりやすい講演を心がけています。最近の演題例は次のとおりです。

「わが体験的ロシア・ウクライナ論-砲声止まぬユーラシアを想う-」
「『陸と海の地政学』から紐解く-日本経済の今後と企業経営の課題-」

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西谷 公明

合同会社 N&R アソシエイツ 代表

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Email:nr-associates@mbr.nifty.com

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