ソ連崩壊30年に寄せて

師走の候、皆さまには益々ご清祥のことと拝察します。

 「根底にあるのは社会の問題。ロシアは・・・イワンからはじまってピョートル、スターリンに由来する中央集権国家。長い間、タテ型の統治がおこなわれ、下には上に依存しきった多数の住民がいる。このレジームが破壊されきっていない」
 10月におこなったZOOM会見(抄録を研究調査に掲載しました)でこう述べたのは、国立モスクワ高等経済学院のロシア政治史学者、メドヴェージェフ教授でした。

 20年前にプーチンは大統領就任後、原油とガスの輸出関税と採掘税を導入。税率は輸出価格と連動する、とされました。つまり、油価が上がれば税収も左うちわで増える仕組み。“レント”(=超過利潤)資本主義たる所以です。プーチンは天然の石油・ガスが生むこの膨大なレントを中央に吸い上げることによって権力の集中に成功したのでした。

 20年後のいま、国家に依存する社会があります。
 -政府歳入:40‐50%は石油・天然ガスおよび関連製品による。
 -経済活動:50‐70%(定義によって開きあり)は国家セクターによる。
 -就業構造:国民の多くは公務員、国家企業の社員、公団の職員として給与を受け取る。
 これぞ、メドヴェージェフさんが指摘する現代ロシアの実像にほかなりません。

 中国との違いについて、メドヴェージェフさんはつづけます。
 「ロシアは“レント”型資本主義、資源輸出のレントに依存した体制。他方、中国は開発独裁で未来志向・・・」。
 専修大学経済学部の田中隆之教授から興味深いコメントをいただきました。
 ―― ロシアは成長がむずかしくなっているので、独裁の正当性を主張できない分、野党や反政権活動への弾圧が強化される構図。このところ中国で起きている出来事も、背景に成長の鈍化があり、開発独裁への支持が潜在的に得られにくくなることへの防御措置とみるべきか?
 両独裁国家における権威主義と情報管理はこれからいっそう強化されていきそうです。

 けれども、重要なのは、大多数のロシア人はプーチンの独裁を受け容れて、“プーチンによる平穏”を肯定している現実です。“ナヴァリヌィ”の事件を声高に報じたのは欧米メディアの情報空間なのであって、多くの国民は彼を遠巻きに眺めていたのでした。おそらく、その点ではお隣の中国も同じでしょう。

 この度、新著『ロシアトヨタ戦記』を中央公論新社から上梓しました。
 2004年1月から2009年3月まで5年3ヵ月にわたるロシアトヨタ時代の出来事を、東西冷戦の終結と平成のバブル崩壊から米中覇権競争下のいまへとつづく、変転する歴史の時空を建付けにして回想しました。『ユーラシア・ダイナミズム』(2019年10月、ミネルヴァ書房)につづく独立後第2作目。  かつてロシアで・・・。ご笑覧いただければ幸いです。
 エコノミストは社会という大きな器に育てていただくものだと思っています。
 ひきつづきご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。
 少し早いですが、メリークリスマス!

心をこめて 

 2021年12月9日

コロナ後への始動

拝啓 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

 11月16日(火)に海外投融資情報財団(JOI)主催のグローバルトピックセミナー(オンライン)に登壇します。
 演題は「ロシアの行方-有識者インタビューから考える-」。

 なお講演につづいて、国際協力銀行・前モスクワ首席駐在員の千葉大介さんとのパネルディスカッションをおこないます。

 また月末の30日(火)には、太陽グラントソントン主催のエグゼクティブニュース懇談会(オンライン)に登壇します。
 演題は「プーチンのロシア-有識者インタビューから考える-」。

 9月におこなった日露オンライン会見の抄録には、多くの方々からご高評をいただきました。二つの講演では、このときのロシア人有識者たちの発言を引きながら、それぞれ異なった視点から私の見方をお話したいと思います。
 なお、日露オンライン会見の抄録を、ひきつづき当サイトの研究調査コーナーに掲載しています。

 日本にも、ようやくコロナ後への光が射してきたようです。
 エコノミストは社会という大きな器に育てていただくものだと思っています。
 変わらぬご指導、ご鞭撻を賜りますよう、どうぞ宜しくお願いいたします。
 時節柄、ご自愛くださいますように。

心をこめて 

 2021年11月1日

プロフィール

西谷 公明(にしたに ともあき)

1953年生まれ

エコノミスト
(合社)N&Rアソシエイツ 代表

<略歴>

1980年 早稲田大学政治経済学部卒業

1984年 同大学院経済学研究科博士前期課程修了(国際経済論専攻)

1987年 (株)長銀総合研究所入社

1996年 在ウクライナ日本大使館専門調査員

1999年 帰任、退社。トヨタ自動車(株)入社

2004年 ロシアトヨタ社長、兼モスクワ駐在員室長

2009年 帰任後、BRロシア室長、海外渉外部主査などを経て

2012年 (株)国際経済研究所取締役・理事、シニア・フェロー

2018年 (合社)N&Rアソシエイツ設立、代表就任

著書・寄稿

  • 著書

    最新著書

    ユーラシア・ダイナミズム-大陸の胎動を読み解く地政学

    ミネルヴァ書房、2019年10月刊行

    ミネルヴァ書房、2019年10月刊行

    目次

    関係地図
    はしがき-動態的ユーラシア試論
    序 説 モンゴル草原から見たユーラシア
    第一章 変貌するユーラシア
    第二章 シルクロード経済ベルトと中央アジア
    第三章 上海協力機構と西域
    第四章 ロシア、ユーラシア国家の命運
    第五章 胎動する大陸と海の日本
    主要参考文献
    あとがき
    索 引

  • 著 書

    通貨誕生-ウクライナ独立を賭けた闘い

    都市出版、1994年

    目次

    はじめに
    序 章 ウクライナとの出会い
    第一章 ゼロからの国づくり
    第二章 金融のない世界
    第三章 インフレ下の風景
    第四章 地方周遊~東へ西へ
    第五章 ウクライナの悩み
    第六章 通貨確立への道
    第七章 石油は穀物より強し
    終 章 ドンバスの変心とガリツィアの不安
    後 記
    ウクライナ関係年表

  • NEW

    寄 稿

    プーチンのロシア-有識者インタビューから考える

    太陽グラントソントン・エグゼクティブ・ニュース 2021年12月号

    記事を見る

  • NEW

    対ロシア外交:求められる冷静な視点とは

    内外情勢調査会『J2TOP』2021年10月号

  • 寄 稿

    ユーラシアの静かなダイナミズムと海の日本

    未来を創る財団『みらい』2020年3月号

    記事を見る

  • 寄 稿

    ロシア、北の大国からの視界-中国と連携しつつ欧州との関係改善を模索

    時事通信Janet・e-world 2020年1月7日

    記事を見る

  • 寄 稿

    大国の内政に巻き込まれるウクライナ-元コメディアンの新大統領が直面する試練

    時事通信Janet・e-world 2019年10月30日

    記事を見る

  • 寄 稿

    連載:ユーラシア・ダイナミズム-中国とロシア、そして胎動する大陸

    ミネルヴァ通信『究』2017年4月号~2019年5月号

  • 寄 稿

    プーチン再選とユーラシア国家の命運

    『世界』2018年3月号

  • 寄 稿

    モスクワから見た日ロ交渉

    『世界』2016年9月号

  • 寄 稿

    対談:ウクライナの安定へ-世界を動かす日本外交の役割とは何か

    東郷和彦氏との対談、『世界』2014年10月号

  • 寄 稿

    誰にウクライナが救えるか

    『世界』2014年5月号

  • 寄 稿

    ロシア極東開発の地政学

    『世界』2013年3月号

  • 寄 稿

    さらばキエフ、さらば長銀

    『中央公論』1999年1月号

  • 寄 稿

    Considering Russia’s Future

    “Japan SPOTLIGHT” May/June in 2018, Japan Economic Foundation

研究調査

ロシア、ウクライナ研究をオリジナル・グラウンドとし、 ユーラシア全体をキャンバスとする広域的なテーマを中心にして実践的な研究調査をおこなっています。

講 演

"陸と海の地政学"をキーコンセプトとして、ユーラシアの2大国、ロシアと中国の関係を軸に、アフターコロナの世界と日本について積極的に講演活動をおこなっています。

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西谷 公明

合同会社 N&R アソシエイツ 代表

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